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2021.03.02

シンボル塔の修繕を行いました

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この春休みに、本学屋上にあるシンボル塔の塗装工事を行いました。
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方形の四面にモニュメントを擁し、中心には天に向かって相輪がそびえるシンボル塔。
修繕にあたり、立正大学仏教学部仏教学科の秋田貴廣先生に、シンボル塔のデザインの意味などをご検証いただきました。
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東京立正短期大学 本館屋上のシンボル(モニュメント)について

立正大学 秋田貴廣

 先日、東京立正短期大学の北川前肇学長より、当大学校舎の屋上に創立当時から設置されているモニュメント(以下、当モニュメントと呼ぶ)について、そこに込められた意図やデザインの趣旨に関して見解をいただきたいというご依頼を受けました。当モニュメントは短大創立(昭和41年)における新校舎建造に際して、大学のシンボルとして企図され設置されたものと推測しますが、制作に関わった当事者の方々の言葉や記録は、残念ながら残っていないようです。そこで僭越ながら、仏教美術や造形する側の視点から推察される事柄について見解を述べさせていただきます。

《仏塔のイメージ》

 当モニュメントの全体像を拝見してすぐに思い浮かぶのは「仏塔」です。少しでも仏教に関わっている者ならば、いや、大きな寺院を参詣したことのある日本人ならば、そこに五重塔、三重塔、多宝塔などの木塔を観たときの印象がよみがえるのではないでしょうか。より具体的に言うならば、木塔の最上部にある「相輪」を思い起こさせるのです。当モニュメントのデザインに、「相輪」の各パーツが現代風にアレンジされていることは明らかです。その各部位のデザインを確認しながら、当モニュメントに込められた意図を推測してみたいと思います。

《日本の木塔における相輪》

 そもそも仏塔は仏舎利を祀り、仏陀の存在を示すものです。その原型であるインドのストゥーパは、半球形の土まんじゅうが基壇の上に載り、頂部に高貴の位を示す天蓋を掲げたものでした。仏教が東漸して文化的に受容される中で仏塔の形態も変化し、日本では木造の建築となりましたが、ストゥーパの諸要素は木塔頂部の「相輪」に集約的に表現されています。

 「相輪」は下の方から露盤、伏鉢、請花、九輪、水煙、竜車、宝珠の順で構成されていますが、方形の露盤がストゥーパの基壇に、半球状の伏鉢がストゥーパ本体の土まんじゅうに、その上の水煙などの部分は天蓋に相当するとみなすことができるのです。このようにストゥーパの要素が「相輪」に集約されているということは、その下の木造建築の架構は、全体が仏舎利を納める容器、あるいは仏舎利が納められた心柱の鞘堂と捉えることができます。

 仏塔はまさに仏陀そのものを象徴する存在なのですが、文化的に捉えると、五重塔に代表される日本の木塔は、天に向かって高く聳える姿が人々の心を鼓舞し、あるいは審美眼を刺激する芸術作品でもあり、古いものは1000年の時を超えて人々の心に働きかけ、人々を支え続けています。その最上部において垂直指向性を実感させる重要なファクターが「相輪」なのです。

《当モニュメントのデザイン》

①最上部の「宝珠」と「九つの輪」

 当モニュメントの印象を決定づけているのは、「九つの輪」と頂部を飾る「宝珠」(と思われる)デザインです。「九輪」は仏陀の教えの象徴である法輪が九つ重なったものと言われています。「宝珠」とは、仏教においては霊験を表す宝の珠のことですが、災難を除き、濁水を清くするといわれ、願いをかなえる宝の意味もあるようです。

 当モニュメントのデザイン・コンセプトが「相輪」だと捉えると、頂部は宝珠で間違いないでしょう。しかし頂部の玉葱型の部分をよく観察すると、そこに宝珠とは別のイメージが重ねられていることがわかります。蓮華の花の蕾、すなわち未敷蓮華です。形のアウトラインは宝珠ですが、よく見ると花弁の重なっている様子が刻まれており、明らかに蕾の状態の蓮華として表現されています。「蓮華」は、清浄な心や生き方を象徴しています。

 「宝珠」と「蓮華」のイメージを重ねるところにどのような意図があったのでしょうか。その意図については想像するほかありませんが、当モニュメントの宝珠が蓮華でもあると知った瞬間、なぜだか温かな心持ちになります。そこに解答があるのかもしれません。

②三角飾り―宝篋印塔の「隅飾」

 当モニュメントは校舎の外階段部分の上部に設けられていますが、屋上の面(高さ)を基準とすると、そこからさらに高い位置に設置されています。外階段を構築する4本の柱を上方へ延長し、屋上の面から浮かすように方形の空間を設け、その上(天井)に、中心から放射線状に四つの三角形のオブジェが配置されています。さらにその上に上記の九輪が載っているのです。

 この三角形のデザインが何を意味するのか、ここがなかなか難しいところですが、当モニュメントのデザイン・コンセプトが相輪であることに立ち戻ることで見えてくるものがあります。それは「宝篋印塔」です。宝篋印塔の傘の四隅に載っている「隅飾」と呼ばれる部分に形が似ています。「宝篋印塔」とは、宝篋印陀羅尼を納めた宝塔という意味を語源として成立した仏塔の一種です。大切な経典を納めることに主眼がある宝篋印塔。そのデザインをアレンジして使用した意図を深読みすると、仏教に基盤を置いた教育機関である本学と、そこで学ぶ若い人たちに向けた想いが伝わってきます。

③四面の透かし模様―水煙

 上記の三角形のオブジェが載る方形空間の四面、その窓にあたる部分に、金属板による透かし模様が配されています。この模様のデザイン・イメージは「水煙」でしょう。中央の柱を軸とする左右対称形で、放物線を逆さにしたような、あるいはろうそくの炎の輪郭を思わせるデザインになっています。「炎」にあたる部分の内側の模様が何を意味するのかについて、その形状から確定するのは困難ですが、デザイン・コンセプトである「相輪」を思い出すと、誰もがこの透かし模様の輪郭に「水煙」を思い浮かべると思います。

 ちなみに通常の木塔においては水煙に火炎状の装飾模様が施されています。釈尊の火葬を暗示しているのでしょう。形は火炎ながら、木造建築であることから火事等の被災を避ける意味もこめて「水煙」と名づけたといわれています。当モニュメントのデザインとして「水煙」を採用した意図の中に、厄災の回避があったかどうかはわかりませんが、「水煙」の呼び名の由来に気づくと、この透かし模様における「小さな円」の連続が水泡のように見えてくるでしょう。

④花弁状の穴

 屋上の面から当モニュメントの方形空間に上がる入口として穴が設けられており、その穴が花びらのような形をしています。機能だけ考えれば円形ないし四角形でよいところをあえて花びらの形にしているのです。何気ない点ではありますが、それだけに、当モニュメントが明確な目的意識に基づいて制作されたことの証左になっていると考えられます。

《当モニュメントに込めた願い》

 ここまで確認してきたように、当モニュメントの制作においては、明確に「相輪」をアレンジするという意図があることがわかります。そしてそれは、この新しい校舎を建造する際に、校舎を仏塔に見立てていることを意味しています。先に少し触れたように、五重塔などの木塔は、頂部に相輪があることによって、それが仏舎利の安置場所であることを人々に伝えているのです。

 仏教関係者であれば、よく見慣れた相輪を仏教系大学のシンボルとすることに何ら違和感を持たれないと思われますが、よくよく考えますと「仏塔」は伽藍の中でも特別な存在です。寺院の本堂や講堂の屋根の上に相輪を載せるということは考えられないでしょう。このような仏塔の特別性に鑑みますと、新校舎の頂部に相輪のモニュメントを設置する意図について、またその発案に至った想いや願いについて探ってみたい衝動にかられます。

 ちなみに文化財資料の観点からの調査により、日本の仏塔に納められた「仏舎利」には、宝石や貴石等が代替品として使用されていることが分かっています。また、浄書した経典を仏舎利とみなして塔に納めることもあります(法舎利)。法隆寺の百万塔陀羅尼も法舎利信仰の一つです。このように仏舎利そして仏陀の存在を、象徴として表現しているところに、宗教的にも文化としても「仏塔」の存在意義があると考えます。

 本学が新しい教育機関として出発するにあたって、その学び舎を仏塔に見立てたとするなら、そこにどのような意図や願いがあったのでしょう。五重塔においては相輪がストゥーパ本体であってその下の架構は容器であるという観点に立つならば、容器としての新校舎が納めるのは「学生」=「象徴としての仏陀」とみなすことが可能です。あるいは、仏塔を仏陀そのものと捉えるならば、新校舎の内部は「仏陀の胎内」とみなすことができます。そこで勉学にいそしむ学生たちが、仏陀の胎内で温かい眼差しに見守られながら過ごすイメージが浮かびます。

 当モニュメントの設置を考案し建造した方々が、実際どのようなお考えをもって制作にあたったかについての実証は不可能です。しかし今回、デザインの意味合いを確認しつつ制作者の意図に寄り添う機会を得て、デザイン採用意図の端々にこれから当校舎で学ぶ人たちへの強い愛情が感じられ、そこに設置意図の起点があることを私は確信しています。考察を進めるほどに、制作した方々の想いや願いが、私の胸の内にもじわじわ染みわたってくるような感覚を覚えたのです。

以上

 

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このたび、お忙しい中、ご検証くださいました秋田先生には心より感謝申し上げます。
教職員一丸となり学生の勉学環境を守っていかなければと身が引き締まる思いでございます。

シンボル塔修繕HP⑥.JPG

 


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